日本の年代別インプラントの普及率
アメリカ・ヨーロッパといった海外では、インプラントが一般的な治療として、広く普及しています。
日本では、まだ一般的と言うには程遠く、敷居の高い治療というイメージが根強いように思えます。
実際の日本でのインプラント普及率についてご説明いたします。
補綴物の装着の有無と各補綴物の装着者の割合
厚生労働省による平成28年度の歯科疾患実態調査の資料によると、歯周病や虫歯、事故などの様々な理由で失った歯を補う補綴物としてインプラントを入れている方は、多くの年代で全体の3%前後であるとなっています。
インプラントを入れている方が最も多いとなっている年齢65~69歳のデータだけを見てみると、インプラント使用率は4.6%・ブリッジの使用率は50.9%・部分入れ歯の使用率は31%・総入れ歯の使用率は8.9%です。
失った歯を補う治療としてインプラントとブリッジはよく比較されますが、装着者の割合の差は大きく開きがありました。
しかし割合が低いインプラントが悪く、割合が高いブリッジが良い治療である、ということではありません。どちらの治療にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
推測ですが、治療にかかる治療費用(インプラントは高額のイメージ)や手間暇(インプラントは期間がかかる)がネックになりブリッジを選ぶ人が多く、インプラントとブリッジの使用割合に大きな差が生まれるのではないでしょうか。
「歯を失った後に治療を受けた100人中、3人はインプラントを入れている」と聞くと意外と多いような気もするかもしれませんが、世界と比べてみると、とても少ないほうなんです。
インプラントは歴史があり、成功すれば予後もよくメリットの多い治療法ですが、保険適用外のため治療費が高額になりがちです。
清掃も難しいので、歯科医院でのメンテナンスも大切です。たとえ高価なインプラント材料を使用し、スキルの高いドクターがオペを執刀したとしても、術後メンテナンスを怠ればインプラントは長く保ちません。
メンテナンスを面倒だと思われる方や、ホームメンテナンスに自信のない方がインプラントはやめておこうと考えられるのでしょう。
50代から補綴物を入れている人の割合はぐんと増え、60歳ごろからは部分入れ歯を入れる人の割合が高くなりますが、どの年代でも入れ歯よりブリッジのほうが選ばれています。
入れ歯は絶対に入れたくないという方が、保険で安く入れられるブリッジを選ぶので、このような差があるのだと考えられます。
世界的に見るインプラントの普及率
世界の人口1万人あたりに対する年間治療患者数
世界の人口1万人あたりに対する年間治療患者数(2020年調べ)
▶世界最大のデンタルインプラントメーカー ストローマン社による2020 Annual Reportより
世界に目を向けて、インプラント治療を受けた患者数を人口比率で比べてみると、韓国が圧倒的に多く、日本はまだまだインプラントの普及率が低いことがわかります。
同じアジアでも、韓国がこれほど高い普及率になる理由は、保険制度の違いにあると考えられます。韓国では2014年より、65歳以上の人はインプラントが2本まで保険適用となりました。韓国国内の歯科医院の70%がインプラント治療を提供しているという環境の違いからも、インプラント普及率が高くなっています。
反対に、中国やインドのような大きな国では、インプラント治療に対応できる歯科医師や歯科医院不足により、インプラント普及率が低い数値となっています。
日本のインプラント普及率が低いのは、諸外国に比べてブリッジや入れ歯など保険治療の治療費が明らかに安く、治療費が高額なインプラントを求める患者様が少ないためでしょう。
インターネットが普及し、様々な情報を得られるようになった近年では、日本国内のインプラントの普及率は増加傾向にありますが、しかし同時に歯を残すためのクリーニングなどへの意識も高まり始め、国としても歯を残す動きを推進しています。
また、日本でも2012年からは条件次第でインプラントを保険適用が可能と定められましたが、その条件は「病気やもらい事故によって顎の骨を失ってしまった場合」「生まれつき顎の骨が足りない場合」と、とても厳しいものです。そこにさらに、医院側の条件もあるので、治療を受けられる医院を探すのにも苦労することでしょう。
現状日本では虫歯や歯周病にかかって歯を失っても、保険でインプラントを入れることはできません。
したがって、インプラントを入れている人の割合が少しずつ増えているとは言っても、急激に大量に増えるということは起こっていないのかもしれません。こういったことから、日本はインプラント治療があまり普及していないのだと考えられます。
アメリカやヨーロッパなどでは、インプラント治療はもっと身近で、一般的な治療として認識している人も多く、普及率も高くなっています。
アメリカでは、歯科治療を保険診療ですべて賄うことができず、日本では数百円~数千円ほどで済むような軽い保険の治療でも、全額負担の自費診療でとても高額になるのが当たり前という環境なのです。
そのため、歯周病や虫歯になる前に、予防に力を入れようという歯に対する健康意識が強い考えが普及しています。
さらにアメリカでは、少し歯並びが悪いだけでも「育ちが悪い」「貧乏な人」という目で見られる風潮があります。
悪い歯は徹底的にいい方法で治そうとする結果、次々と歯を失うリスクのあるブリッジを選ぶ人は減少し、高額でも機能的で見た目も美しいインプラントを選ぶ人がたくさんいるということですね。
インプラントに対する満足度
20 年以上経過したインプラント患者のアンケート調査(2015年8月実施)
世界の人口1万人あたりに対する年間治療患者数(2020年調べ)
インプラントを埋入してから20年経過した患者様を対象に行なったアンケート調査では、60代、70代、80代のどの年代でも約75~85%もの方が、「何でも噛める」と回答しています。
「柔らかいものしか噛めない」と回答した方は、1.3~2.3%と、とても低い数値となりました。
インプラントについて、「満足」と回答したのは92.6%、「不満」と回答したのは5%でした。
不満と回答した方に理由も伺うと、一番の理由は機能性や歯周トラブルではなく、「費用」という回答です。
自費診療なので費用は大きな負担になりますが、治療内容や使用感の点では、患者様のインプラントに対する満足度が全体的に高いことがわかります。
口腔インプラントの生存に関する疫学調査
オッセオインテグレーション獲得率
また、Osseointegration-オッセオインテグレーション(チタンと骨が直接結合すること)率を調査したデータからも分かるように、予後の生存率が高いことも注目すべき大きなメリットです。どの部位でも、78~96%ものインプラントがしっかりと骨と結合し、歯としての役割を果たせるようになったということが分かります。
金属のチタンと骨がしっかりと結合することで、自分の歯が再生したような感覚で、何でも噛めるようになるのがインプラントの強みです。
このように日本でのインプラント治療は進歩しており、プラス要因が多く長期間でもしっかり機能し続けています。
若い頃はインプラントでよくても、老後は悲惨なことになるのでは?と心配している方にも、安心して治療を受けていただけるようなデータです。
お気軽にご相談ください
海外から見ると、インプラントを導入している日本国内の歯科医院はまだまだ少ないのが現実です。しかし、インプラント研究が進み、多くの医師がオペに対応できるようになれば、日本での普及率はさらに上がっていくと思われます。
また、普及率だけでなく、日本でのインプラントに対する満足度も向上してきていることもデータからわかります。
今の日本で多くのシェアのあるブリッジは、失った歯の両隣以上の歯を削って神経を抜き、複数の歯につながった差し歯を接着して、失った歯を補う治療です。残った歯には大きな負担がかかり、何本もまとめてだめになってしまう可能性のある、問題が起こりやすくリスクの高い治療です。
ブリッジのリスクを知った人たちによって、大切な残存歯をしっかりと守りながら失った歯を補う治療方法として、世界中でインプラントが選ばれています。
インプラントはおいしく食事ができ、入れ歯に比べて違和感がないため話しやすいのが大きなメリットです。何でも食べられるようになるということは、精神的な健康と身体的な健康を手に入れるのに必要不可欠です。
さらにインプラントは審美性も高く見栄えもいいので、日本でも需要は今後もどんどん増えていくでしょう。
一方で課題になっている、治療期間や治療費のこと、術後メンテナンスについてもきちんと理解して選んでいただきたいと思います。
当院では海外でインプラント治療を学び、年間2000本以上を埋入している実績と技術のあるドクターがオペを担当します。また、CTや専門的な機器を搭載した治療体制及び丁寧なカウンセリングや術後メンテナンスなどの体制も構築されています。
インプラント治療を受けるか迷っている方や、疾患のある方、他院でお断りされた方も、是非ご相談ください。ご質問があれば、どんなことでもお尋ねください。