保険診療と自費診療(自由診療)の違い
自治体や国が治療費の一部を負担し、患者様は1~3割の負担で済む治療が保険診療です。
反対に、自費診療(別名自由診療)は、医療保険の適用なしに受ける治療です。自費診療の治療費用は全額の10割が患者様の負担となります。
歯科治療の自費治療(自由診療)というと、セラミックやインプラントなどの補綴物の治療法を思い浮かべる方が多いかと思います。これらの治療は保険適用外であり、患者様が自費で治療費を全て負担する必要がありますが、美しい見た目と優れた機能を提供することができます。
セラミック治療は、天然歯に近い色や透明感を持ち、審美的な見た目を重視する方に適しています。また、インプラントは失われた歯を再生させたような感覚に近いため、入れ歯やブリッジよりもより自然な咬合感や快適さを追求したい方に人気です。
歯科の自費診療は補綴物だけではありません。1本の虫歯を治療するためにも、保険診療か自由診療か選ぶことができ、どちらを選ぶかによって治療の方法や、治療後の歯の健康状態などが変わります。
こちらではその違いや差について解説いたします。
保険診療のメリット
自己負担額を抑えられる
保険診療は、社会保険や国民健康保険等の公的医療保険制度を利用して行う歯科治療のことです。 日本では、全国民に公的医療保険制度への加入が義務付けられているので、病院で保険証を提示すれば、一定の範囲内で医療サービスを受けることができます。
70歳未満は3割負担、75歳以上は年齢や所得により2割や1割負担と、自己負担の割合には年齢や所得によって違いがありますが、患者様は自己負担額を大きく抑えることが可能です。
保険の治療を提供した医療機関が、医療サービスの対価として受け取る報酬が「診療報酬」です。診療報酬の点数は厚生労働大臣によって全国共通で決められています。1つの医療行為ごとに細かな点数が決められており、1点を10円として計算します。
例えば100点に定められている医療サービスを受けた場合は、100×10円=1,000円の医療費となりますが、3割負担の保険証を持っている人の場合は、1,000円の3割である300円を医療機関に支払い、自己負担することになります。
このように保険治療は自己負担額を抑えて治療を受けられるのが最大の利点です。
保険診療のデメリット
治療方法の制限がある
保険治療には、歯科検査・歯科治療方法・被せ物や詰め物などの素材・処方薬など、多くの詳細な規定があります。保険診療ではいずれも一定の範囲内で提供されるため、受けられる治療方法は限られています。
残念ながら、保険治療で受けられる治療は、「現代の歯科治療の中で最良・最新の治療法」であることは現状ほとんどありません。保険診療は一般的な歯のトラブルや疾患に対して最低限の治癒が可能な治療を提供しますが、審美的な要素や精密な治療が必要な場合には、保険の範囲外となることがあります。
自費診療のメリット
治療方法・使用できる素材などの選択肢の多さ
自費診療の最大のメリットは、治療法の多さです。たくさんの選択肢から、歯科疾患の再発リスクが少ない歯科治療や、審美性に優れた歯科治療など、お口の健康状態や見た目のために最良とも言えるような歯科治療を、制限されることなく選択することができます。
医院によっては、治療期間を短縮するプランも選択可能となります。ザ・インプラントクリニック福岡でも、1日で可能な限り治療を進める短期集中治療を実施しています。
治療計画のための検査内容も精密
自費診療とは、インプラントやホワイトニング、矯正歯科などの歯科治療そのものだけではなく、治療方針を決めるための精密検査も含まれます。自費治療は保険診療よりも幅広い治療方法や材料を使用することができるため、より正確な診断や評価が求められます。
保険診療と自費診療では、使うことができる器材や設備、それによって獲得できるデータや、提供できるドクターのスキルにも差が生じます。
例えば、セラミック治療やインプラント治療の場合、治療前に3D画像を使用したCTスキャンやパノラマレントゲンなどの詳細な画像検査を行うことが一般的です。これにより、患者様の口腔内の状態を立体的に把握し、治療計画をより精密に立案することが可能となります。
また、自費治療では歯科医師がより時間をかけてカウンセリングを行い、患者様のご希望や不安な点、予算などをよく理解していただいた上で治療プランを提案します。
自費治療を受ける際には、患者様と歯科医師との信頼関係がより重要となります。治療の詳細や費用についてしっかりと相談し、患者様が納得のできる治療計画を立てることが大切です。
高い精度の噛み合わせ
当院の自費診療では、被せ物の噛み合わせの調整を少なくするためにデジタルで被せ物を製作しています。一般歯科では歯科技工士の手作業で仕上げるのが主流ですが、デジタルで被せ物を製作することにより3倍以上の精度で被せ物を作り、細かい噛み合わせの調整まですることが可能になります。
1つ1つの機材や機器、道具にまでこだわって治療ができるのが自費診療のメリットです。
「見た目がキレイな歯ができる」という点以外にも、見えない部分にたくさんの違いがあります。
自費診療のデメリット
経済的な負担が大きい
治療の成功率や再発リスクの差
歯科医療において保険診療となる一般的な治療の範囲には以下のようなものがあります。
・定期的な検診やクリーニング
・虫歯治療(詰め物や被せ物)
・歯周病治療
・抜歯
・歯の根管治療
・入れ歯 等
保険適用でもある程度の歯科疾患に対応できるように感じられるかもしれませんが、前述している通り、治療に使える薬剤や素材が限られます。また、診療報酬点数を稼ぐためには、たくさんの患者様をいかに効率よく診療するかが重要視されます。そうなると、一人の患者様に長い時間を掛けることも難しくなり、治療自体も雑になってしまう可能性もあります。
小さな虫歯などで削った歯を詰め物で補修する治療に、保険診療では広く使用されている「コンポジットレジン(CR充填)」という方法があります。
白いプラスチックの詰め物なので、治療したてでは天然歯との境目が分からなほどきれいに治せるのですが、劣化しやすいので割れたり変色したり、二次虫歯のリスクもある治療方法です。
同じように詰め物を入れる自費診療の治療に「ダイレクトボンディング」というものがあります。ダイレクトボンディングでは、コンポジットレジンで使用されるプラスチックの詰め物に、セラミック粒子が混ぜ込まれたハイブリッドセラミックという素材を使用します。
保険適用のレジンに比べ、耐久性や美しさが優れています。二次虫歯にもなりにくくなり、健康面でも保険適用のコンポジットレジンの上位互換だと言えるでしょう。
また、根管治療においても、保険と自費で差が生じます。根管治療は歯の神経を取り除き、感染した組織を除去してから、根の中をきれいにして薬剤を詰める治療です。
アメリカでは根管治療専門の歯科医院で治療を提供するほど、専門的な治療で重要視されている根管治療ですが、日本の保険制度では虫歯の治療やクリーニングなどを行う一般歯科で治療を提供する場合が普通です。
保険適用の限られた機材や設備で行う根管治療の場合、通院回数がかかり、1本の歯の治療に半年以上を費やすというケースも珍しくありません。
それほどまで期間をかけて治療を終了したにも関わらず、根の中を密封する薬剤が不十分であったり、劣化したりしてしまうと、その歯は再び細菌感染を起こします。保険の根管治療は成功率は低く、再発率は高いという残念な状態になってしまいがちなので、最終的には抜歯するしかなくなってしまうということも珍しくありません。
自費で根管治療を行う場合は、マイクロスコープや特殊な器具・薬剤等を使うことができます。湾曲歯管などの難症例にも対応可能で、密閉力も高い根充剤を入れることができるので、歯の寿命が格段に上がります。
このような治療は一例です。上記の治療の他にも、様々な治療で保険と自費の治療に大きな差が生じるものがあります。
「自分が歯科治療に求めているものは何か」をしっかり考えましょう
歯科医師の知識やスキルの差もあるため、すべてにおいて自費診療のほうがいいものであるとは言えませんが、下記のような考えをお持ちの方は、自費診療も歯科治療の選択肢のひとつとして考えることをオススメしています。
・長年お口の中のトラブルで悩みがあり、解決したい
・対処的な治療でなく、お口の中を根本的に治していきたい
・再発を防ぎ、治療後も長く自身の歯を大切に守りたい
歯の欠損部分を保険診療の被せ物で補うことはできますが、その場合によってはセラミック治療やインプラント治療の方がより美しく自然な見た目を実現できることがあります。また、歯周病の進行が重い場合や根管治療の複雑なケースにおいては、保険診療だけでは十分な対応が難しいこともあります。
結果重視の自費診療と、価格重視の保険診療では、目指しているゴールが違うと考えましょう。
自費診療は保険適用の治療よりも高度で個人に合わせた治療が提供できますが、それには費用がかかってしまいます。治療を選択する際には、予算や治療の希望、口腔の状態をよく理解した上で、歯科医師との十分な相談が重要です。患者様ごとに適した治療プランをご提案・ご提供することができる医院を見つけることが大切です。
ザ・インプラントクリニック福岡では、患者様ごとに適した自費診療をご提案・ご提供できるよう、設備の充実や技術の研鑽のための努力を惜しみません。
ご自身の歯や、インプラントを長持ちさせたいという方は、お気軽にご相談ください。